AIでJRAの回収率110%を目指す検証(第31回)|有料サービスの「数字つきの主張」4本を4年分で測った【追記あり: 検証3・検証4は第32回で訂正しています】

有料サービスの「数字つきの主張」4本を4年分で測った 実験ログ

【重要な訂正・同日追記】この記事の検証3と検証4は、条件を落として測っていました。

  • 検証3には元記事に「9〜12レースを対象」という限定が付いていました。我々は全レースで測っていました。
    限定を戻すと、外れていた回収2つ(単勝・複勝)が両方とも主張値の区間に入ります。5指標すべて再現します。
  • 検証4は「穴馬」の話ではなく「朝の1番人気が4番人気以下に落ちた馬」の話でした。
    我々はまったく別の馬を測っており、この検証は主張の反証になっていません。

落としていたのは我々のほうです。 測り直した結果は第32回に書きました。
この記事は当時の記録としてそのまま残します。以下の検証3・検証4の数字は、修正前のものです。

有料の競馬オッズ解析サービスが、公開記事で数字つきの主張をいくつか出しています。
「この条件なら1番人気の勝率は68.1%」「この形なら穴馬の回収値は100を超える」といった具合です。

JRA 4年分で4本とも測りました。
勝率・連対率・複勝率は、小数第1位まで合いました。
回収率を出した3か所は、3つとも再現しませんでした。

この検証について

JRAのレースを対象に、公開データだけで回収率110%が成立するかを検証しています。
的中率ではなく回収率を見ます。当たっても払戻が控除率を超えなければ、当たった意味はありません。

これまでに106回の実験をしています。今回はそのうち101〜106回目の6本です。

母集団: 2021-2024年・中央10場・平地(障害を除く)・新馬を除く・8頭立て以上。
11,745〜11,783レース(測る対象によってわずかに違います)。
すべて探索期のデータでの検証で、将来の成績を約束するものではありません。


検証1|「2番人気÷1番人気が6.5倍を超えると、1番人気の勝率は68.1%」

朝のオッズで、2番人気の単勝オッズを1番人気の単勝オッズで割った値。
これが6.5を超えると1番人気が飛び抜けて強い、という主張です。

我々の実測
該当レース 177(母集団の1.50%)
勝率 69.49%(95%区間 62.50〜76.11%)
単勝回収 92.3%
複勝回収 95.4%

主張の68.1%は区間の中にあります。再現しました。

ただし、この馬が「割安」かどうかは別の話です。
同じ単勝オッズの1番人気と比べると、勝率の上乗せは対照を細かくするほど消えていきます
(最も厳しい比べ方では +1.9pt で、区間が0を跨ぎます)。

そして単勝回収は92.3%。当たりやすいことと、儲かることは別でした。


検証2|「単勝30倍以内が12頭以上なら、穴馬を全部買って回収値100超」

レース全体のオッズの形で買うかどうかを決める、という主張です。
「30倍以内が4頭しかいないレースは穴馬にチャンスがない」とも書かれています。

該当したのは 1,241レース(10.53%)。穴馬の定義は主張側に書かれていないので、
こちらで3通り決めてから測りました(結果を見てから決めていません)。

穴馬の定義 単勝回収 95%区間
朝一10〜30倍 81.3% 73.7〜89.0%
人気6位以下 77.6% 67.5〜88.6%
朝一30倍超 75.8% 49.1〜103.9%

主力の定義では、区間の上限すら100に届きません。棄却です。

一方で、「30倍以内が4頭以下ならチャンスがない」という逆側は、向きが合っていました。
3つの定義すべてで、穴馬の単勝回収が 41〜48%(母集団より16〜26pt低い)。
ただし該当が73レースしかなく、検定できる量ではありません。


検証3|「朝の1番人気が、直前に2番人気以下へ落ちた馬」

ここがいちばん驚きました。

該当は 2,755レース(1番人気の23.5%)。

我々の実測(95%区間) 主張
勝率 20.87%(19.42〜22.37) 21.2% ✅
連対率 36.48%(34.73〜38.31) 35.7% ✅
複勝率 48.17%(46.24〜50.11) 47.8% ✅
単勝回収 93.07%(85.62〜100.41) 102 ❌
複勝回収 86.20%(82.55〜89.81) 90 ❌

着順に関する3つは、小数第1位まで合いました。
回収に関する2つだけ、8〜9pt 足りません。

面白い事実がひとつ。この「落ちた1番人気」は、座を守った1番人気より回収が高いのです。

落ちた   勝率 20.87%   単勝回収 93.07%
守った   勝率 35.06%   単勝回収 80.45%

当たらないのに回収は高い。配当が付くからです。主張の向きは合っていました。
それでも100には届きません。


検証4|「直前より朝のほうが売れている穴馬は、単勝回収118」

我々がこれまで追ってきた向きと逆の主張です。
我々は「買われた馬」を追ってきました。これは「見放された馬」が儲かると言っています。

穴馬の定義 条件を満たす 満たさない
朝一10〜30倍 72.80%(68.38〜77.33) 74.63%
人気6位以下 63.28% 67.10%
朝一30倍超 57.75% 57.77%

主張の118に対して72.80%。差は45ptです。
しかも、条件を満たさない穴馬より低い。方向すら逆でした。

ただし公平を期すと、この主張だけ定義の書かれ方が特に曖昧でした。
「穴馬」も「売れている」も定義がありません。こちらの解釈が違う可能性が、他の3本より高いと考えています。
書けるのは「我々の定義では成立しない」までです。


4本を並べて見えたこと

着順に関する主張   ほぼそのまま再現した(勝率・連対率・複勝率)
回収に関する主張   出した3か所すべてが再現しなかった(100超 / 102 / 118)

同じ集合で、着順が合って回収だけずれる。
これは偶然ではなく、測り方の違いだと考えています。

「この条件の馬は3着以内に来やすい」は、条件で切って数えれば出ます。
しかし「儲かる」を言うには、同じ価格の馬と比べる必要があります。
人気馬を多く含む条件なら、当たりやすいのは当たり前で、そのぶん配当が安いからです。

これは推測です。相手の検証手順は公開されていません。
ただ、我々が公開しているのはまさにその「価格を揃えた比較」です。そこが違いだと思っています。


副産物のほうが大きかった

主張4本より、記事本文にあった定義の一文のほうが価値がありました。

「直前オッズとは、発走10分前のオッズ」

我々はこれまで「直前」を発走1分前や朝8時40分として測っていました。時点が違っていたのです。

そこで、前走の締切前にどれだけ買われたかという量を、発走11分前を基準に作り直しました。
(我々の手元にある時点で、発走10分前にいちばん近いのがここです。)

基準にした時点 同じ価格帯の馬に対する複勝の的中上乗せ
朝8時40分 +2.82pt(2.16〜3.48)
発走11分前 +3.75pt(3.13〜4.37)

時点を1つ変えただけで、1.3倍強くなりました。
対照を4倍細かくしても数字は動かず、4年とも同じ向きでした。
さらに、これまで一度も出なかった回収率の上乗せも +3.94pt(1.92〜5.99)で出ました。


それでも、買い目にはなりませんでした

正直に書きます。この量を単独で買っても100%には届きません。

上位30%を買う  複勝回収 79.7%
上位20%        81.1%
上位10%        81.7%
上位 5%        83.4%
上位 1%        83.6%   ← 絞っても84%で止まる

当たる回数は絞るほど増えるのに、回収は84%で頭打ちになります。
増えた的中のぶんだけ、配当が安いということです。

レースを選べば変わるかも測りました。1番人気の堅さで6段階に分けて、全部です。

最も堅いレース  89.6%(区間 82.1〜97.7)
最も荒れるレース 81.5%(区間 75.1〜88.3)
→ **6段階すべてで区間の上限が100未満**

「レースを選べば買える層がある」という道は、ここで閉じました。

ただし収穫もあります。的中の上乗せは6段階すべてで確認できました(+2.9〜+4.2pt)。
頭数を揃えても消えません。レースの性質に依存せず、広く一様に効くということです。
これは、少ないデータでも確かめられる形をしている、という意味で重要です。


まとめ

✅ 再現した   1番人気の勝率68.1% → 69.49%
✅ 再現した   朝の1番人気の陥落(勝率・連対率・複勝率が小数第1位まで一致)
❌ 再現せず   穴馬の回収100超 → 81.3%
❌ 再現せず   陥落した1番人気の単勝回収102 → 93.07%
❌ 再現せず   見放された穴馬の単勝回収118 → 72.80%(方向も逆)

・最大の収穫  記事の定義の一文から、我々のいちばん確かな量が生まれた(+3.75pt・4年安定)
・それでも    単独では84%で飽和。レースを6段階に分けても、全部で上限が100未満

当たることと、儲かることは別です。
この検証を始めてから106回、そのことを何度も確認しています。今回もそうでした。

すべて2021-2024年のデータでの結果であり、将来の成績を約束するものではありません。
特定のサービスの是非を論じる記事ではありません。公開されている主張を、こちらのデータで測っただけです。

外れたのは相手か、こちらの読みか。答えは次の皿で。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

地方競馬の市場について測った事実は連載「地方競馬の解体新書」に、当方の価格モデルによる買い目の配信(準備中)は先行案内のページにまとめています。