AIでJRAの回収率110%を目指す検証(第32回)|「相手の主張が外れた」と書いた当日に、条件を落としていたのは我々だと分かった

「相手の主張が外れた」と書いた当日に、条件を落としていたのは我々だと分かった 実験ログ

前回(第31回)、有料の競馬オッズ解析サービスの「数字つきの主張」を4本測って、こう書きました。

「着順に関する数字は小数第1位まで合った。回収に関する数字は3つとも外れた。」

その日のうちに、元記事を読み直しました。
条件を2つ落としていたのは、我々のほうでした。

落とした条件を戻すと、外れていた回収2つが、両方とも主張値の区間に入ります。

この検証について

JRAのレースを対象に、公開データだけで回収率110%が成立するかを検証しています。
的中率ではなく回収率を見ます。当たっても払戻が控除率を超えなければ、当たった意味はありません。

母集団: 2021-2024年・中央10場・平地(障害を除く)・新馬を除く・8頭立て以上。
そのうち朝のオッズで1番人気だった 11,697頭が今回の対象です。
すべて探索期のデータでの検証で、将来の成績を約束するものではありません。


何を落としていたか

前回測った主張のうち2本について、元記事にはこう書かれていました。

主張A(前回の検証3)

朝の1番人気が、直前に2番人気以下へ落ちたケース。
9〜12レースを対象とすると、勝率21.2% / 連対率35.7% / 複勝率47.8% /
単勝回収102 / 複勝回収90。

我々は「9〜12レースを対象」を落として、全レースで測っていました。

主張B(前回の検証4)

朝の1番人気だった馬が、最終的に4人気以下にまで落ちたケース。
このタイプの馬は単勝回収値118を記録している。

我々は「1番人気の話」を「穴馬の話」と読み違えて、まったく別の馬を測っていました。

つまり前回の検証4(実測72.80%・「主張の118に対して差は45pt」)は、
主張Bの反証になっていません。測っていた対象が違います。


測り直しました

条件を2つとも戻して、同じ4年分で測り直します。
測る前に、母集団・条件・判定の基準・こちらの予測を書いて記録に残してから測っています(前回と同じ手順です)。

該当したのは、朝の1番人気11,697頭のうち——

頭数 割合
直前も1番人気のまま 8,950 76.5%
直前に2番人気以下へ 2,747 23.5%
 うち9〜12レース(主張Aの条件) 1,114
直前に4番人気以下へ(主張Bの条件) 397 3.4%

結果1|主張A — 5つとも再現しました

朝の1番人気 → 直前に2番人気以下 → 9〜12レース限定(1,114頭)

我々の実測(95%区間) 主張
勝率 21.27%(18.85〜23.61) 21.2% ✅
連対率 36.45%(33.57〜39.14) 35.7% ✅
複勝率 48.11%(45.24〜50.99) 47.8% ✅
単勝回収 99.63%(87.31〜112.21) 102 ✅
複勝回収 90.39%(84.51〜96.48) 90 ✅

前回 ❌ を付けた2つが、両方とも ✅ になりました。


結果2|動いたのは回収だけです

同じ条件で、「9〜12レース」を入れた場合と入れない場合を並べます。

頭数 勝率 単勝回収 複勝回収
9〜12レース限定(主張どおり) 1,114 21.27% 99.63% ✅ 90.39% ✅
全レース(前回の測り方) 2,747 20.93% 93.34% ❌ 86.45% ❌

着順(勝率)はほとんど動きません。21.27% と 20.93% です。
動くのは回収だけ。単勝で6.3pt、複勝で3.9pt。

同じ性質の馬が、後半のレースでは配当が付いているということです。

前回の記事で「着順は合うのに回収だけ8〜9pt ずれる」と書いて、
理由が分からないまま出しました。理由はここにありました。
ずれていたのは相手の数字ではなく、我々が並べていたレースの範囲です。


結果3|主張B — 区間には入ります。ただし買えません

朝の1番人気 → 直前に4番人気以下(397頭)

我々の実測(95%区間) 主張
勝率 15.11%(11.84〜18.64) —
連対率 26.45%(22.17〜30.98) —
複勝率 34.26%(29.72〜39.04) —
単勝回収 114.69%(87.36〜144.44) 118 ✅
複勝回収 86.05%(73.70〜99.58) —

点の数字は114.69%。主張の118は区間の中にあります。

それでも、我々はこれを買いません。

区間の下限が87.36%だからです。
397頭では、114.69%と100%を区別できません。
「4年分で平均すると100を超えていた」ことと「次の1年も超える」ことは別です。

この点は測る前に予告してありました。
「397頭では区間が広く、決着しない可能性が高い」と書いてから測っています。
決着しなかったので、決着しなかったと書きます。


結果4|落ちるほど回収は上がる。ただし一直線ではない

直前に何番人気まで落ちたかで分けます。

直前の人気 頭数 勝率 単勝回収 95%区間
1番人気のまま 8,950 35.22% 80.81% 78.35〜83.29
2番人気 1,713 23.88% 91.87% 84.12〜99.95
3番人気 637 16.64% 84.00% 69.15〜100.25
4番人気 240 17.92% 121.62% 87.12〜159.76
5番人気以下 157 10.83% 104.08% 58.28〜157.90

「落ちるほど当たらないが、落ちるほど回収は上がる」向きは出ています。
ただし一直線ではありません。3番人気で84.00%に下がります。

4番人気の121.62%を見て「4番人気だけ買えばいい」とはしません。
240頭しかなく、区間は87〜160%です。
どこで切ると良いかを探し始めた時点で、探した本人に都合の良い数字が出ます。
今回は元記事の切り方(2番人気以下・4番人気以下)だけで判定しています。

年ごとに見ても、4番人気以下の単勝回収は
120.36% / 89.70% / 121.20% / 129.11%。
4年のうち1年は90%を割ります。年あたり79〜111頭しかない数字です。


それで、いくら儲かるのか

主張Aの条件で、主張どおりの数字が出たとして——単勝回収は99.63%です。

日本の単勝の控除率は約20%。
何も考えずに買えば、平均して80円ちょっとしか返ってきません。
99.63%は、そこから19pt以上を取り返しているということです。

それでも100を超えていません。
「主張は正確だった」と「その通りにやれば儲かる」は、別の話です。


今回いちばん効いた教訓

「相手の数字が外れた」と書く前に、自分が条件を落としていないかを確かめる。

前回の記事を書いた時点で、我々は元記事の該当箇所を読んでいました。
それでも「9〜12レースを対象」の一行と、「1番人気の話である」ことを落としました。
落としたことに気づいたのは、公開前の読み直しのときです。

落とした結果は「相手が外れている」という方向にだけ出ました。
これは偶然ではありません。
条件を外して母集団を広げると、たいていの効果は薄まります。
薄まった数字を主張値と比べれば、主張は外れているように見えます。

相手の主張を検証するときは、条件を1つずつ声に出して確認する。
これは相手のための作法ではなく、自分が間違えないための作法です。


次にやること

主張Aは我々の4年分で再現しました。ただし単勝回収99.63%では買えません。
主張Bは区間に主張値を含みますが、397頭では決着しません。

どちらも「この条件だけで回収率110%になる」道ではありませんでした。

我々の側で、まだ一度も測っていないことが1つあります。
これまでの実験は、全部「1点あたり同じ金額」で買っています。
何を買うかではなく、いくら賭けるかを変えたら回収率がどう動くか。
次はそこを測ります。


本記事は探索期(2021-2024年)のデータによる検証記録です。
将来の的中・回収を保証するものではありません。馬券の購入は自己責任でお願いします。

失礼した。品書きを最後まで読んでいなかったのは、こっちだ。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

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