AIで回収率110%を目指す検証(第42回)|回収率125%。では、あと何日買えば「本当に勝っている」と言えるのか【追記あり】

回収率125%。では、あと何日買えば「本当に勝っている」と言えるのか 実験ログ

この後どうなったか: この3開催日は、ある有料予想ツールの推奨買い目(ワイド)をそのまま買ったものです。4開催日目を加えた実弾は120.3%(95%区間 93.8〜148.6%)で、同じ推奨買い目を実弾より前の12開催日と合わせた16開催日・3,428点で紙の上で集計すると93.6%(95%区間 84.4〜103.1%)でした(第49回)。

前回(第41回)は「監視が4日間ずっと異常なしと言っていた」という運用の失敗談でした。
今回は、その逆の話です。数字は良い。良すぎるくらい良い。それでも私は「勝っている」と書けません。
書けない理由を、計算して数字にしました。


1. まず、出ている数字

前向き検証として、ある選別ルールに従ってワイドを1点100円ずつ、レースを選ばずに買い続けています。
3開催日ぶんの実績はこうなりました。

開催日 レース 購入 払戻 回収率
1日目 28 17,000円 21,020円 123.6%
2日目 36 21,400円 29,490円 137.8%
3日目 22 12,900円 14,100円 109.3%
計 86 51,300円 64,610円 125.95%

3日とも100%を超えています。合計で+13,310円。

ここで「回収率125%の手法を見つけた」と書けば、記事としては派手になります。書きません。

2. 区間を出すと、話が変わる

点推定の125.95%だけでは何も言えないので、レース単位のブートストラップで95%区間を出しました。

回収率 125.95%   95%区間 [95.06, 160.98]

下限が95.06%。100%を割っています。 つまり「本当は負けている手法が、たまたま3日良く出ただけ」という可能性が、
このデータでは否定できません。区間の幅は66ポイントもあります。

私はこの計画で、下限が対照を上回らないものをエッジと呼ばないと決めています。
過去に5回、点推定だけを見て「見つけた」と言い、あとで消えました。だから今回も呼びません。

3. 本題:では、あと何レース必要なのか

ここからが今回の中身です。「足りない」で終わらせず、あと何レースで足りるのかを計算しました。

必要なレース数は、教科書どおりの式で出ます。

必要n = ( 2.8 × 標準偏差 ÷ 見たい差 )²

2.8 は「両側5%・検出力80%」の定数です。大事なのは、必要nが「見たい差」の2乗で効くこと。
差が半分になると、必要なレースは4倍になります。

今回、1レースあたりの回収率の標準偏差を初めて実測しました。

ワイド(1点100円)の1レースあたり標準偏差 = 1.723

これを式に入れます。

何を見たいか 必要レース数 開催日に直すと
10ポイントのエッジ(110%かどうか) 2,328 約65開催日
いま見えている26ポイントの差 346 約9.6開催日

同じデータから、65日と9.6日という6倍以上違う答えが出ます。 どちらも正しい。見たいものが違うだけです。

  • 「回収率110%を確実に見分けたい」なら65開催日。中央競馬は年約104開催日なので、7〜8か月かかります。
  • 「いま見えている125%が本物かだけ知りたい」なら9.6開催日。いま86レース=必要数の25%です。

この2つを並べて出さないと、話が誘導的になります。 前者だけ出せば「絶対に無理」に見え、
後者だけ出せば「もうすぐ分かる」に見える。実際はどちらでもなく、目的によって違うが正解です。

4. 券種を変えると、桁が変わる

同じ計算を、単勝と複勝でもやりました。中央競馬・2022〜2024年・約12万頭の全馬ベタ買いです。

券種 回収率 的中率 平均配当 1点の標準偏差 10ptの検出に必要な開催日
複勝 73.11% 21.55% 3.392 267.9 156日
単勝 70.20% 7.19% 9.763 593.1 766日

単勝は複勝の5倍のレースを要します。766開催日は7年以上です。

理由は表を見れば分かります。単勝は的中率7.19%で平均配当9.763倍 ——
たまに大きく当たる形です。1本の大穴が結果の大半を決めるので、何レース積んでも
「運か実力か」が分かれません。3連複も同じ構造で、月次のばらつきを見ると
複勝の4倍近い幅で暴れます。

「単複」とひとくくりにすると危険です。重ねやすいのは複勝だけです。

5. 選別は、期待値だけでなく「決着の速さ」にも効く

もう1つ、今回気づいたことがあります。

ベタ買いの複勝の標準偏差は2.68(比率スケール)でした。ところが、
選別したあとの同じ指標を過去の記録から拾うと1.50まで下がっています。

必要nは標準偏差の2乗で効くので、

(2.68 ÷ 1.50)² ≒ 3.2倍  →  必要レース数が約3分の1
156開催日 → 約49開催日

選別というと「当たる馬を選ぶ=期待値を上げる」と考えがちですが、
同時に「ばらつきを削る=答えが出るまでを短くする」効果があります。

後者は地味ですが、検証を人間の時間に収めるという意味では、同じくらい効きます。

6. なぜこの計算を先にやるべきだったのか

正直に書きます。私はこの計算を、実弾を出し始めてから3日目にやりました。順序が逆です。

検証を始める前に必要nを見積もっていれば、
「4開催日で判定する」という当初の計画が甘いことは、撃つ前に分かっていました。
実際、事前登録には「標準偏差は未計測なので、まず4開催日ぶん貯めてから必要nを計算する」と
書いてありました。書いてあったとおりにやったら、4日では全然足りないと分かったという順序です。

これは失敗ではなく設計どおりの中間結果ですが、
「いつ答えが出るのか」を最初に見積もるのは、どんな検証でも先にやる価値があります。
やっていないと、良い数字が出たときに止めたくなります。それが一番危ない止め方です。

7. 今回の結論

✅ 3開催日で回収率125.95%。金額では+13,310円
・ただし95%区間は [95.06, 160.98]。下限が100%を割るので「勝っている」とは言えない
・1レースあたりの標準偏差 1.723 を実測。必要nが初めて数字になった
・10ptを見るなら65開催日/いま見えている26ptを見るなら9.6開催日。現在は必要数の25%
・券種で桁が変わる。複勝156日・単勝766日。重ねやすいのは複勝だけ
・選別は分散も下げる。複勝で必要数が約3分の1になる

次にやることは、買い続けることだけです。 判定は決めた回数だけ、決めた規則で行います。
途中で「もう十分勝っている」と思っても止めません。それをやると、この計算全部が無駄になります。


この記事は実験ログです。特定の馬券の購入を勧めるものではありません。
数字はすべて自分の口座と自分のデータベースで実測したもので、記載時点の値です。

旨い日が続いても、まだ常連の顔はしないでおこう。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

地方競馬の市場について測った事実は連載「地方競馬の解体新書」に、当方の価格モデルによる買い目の配信(準備中)は先行案内のページにまとめています。