私たちの買い目は、ほぼ全部が複勝です。すると当然こう聞かれます。
「同じ馬を単勝で買えば、配当が大きいぶん、もっと儲かるのでは?」
今回はこの問いに3年分のデータで答えた話と、その副産物として
新しいセルが1つ生まれた話です。
前提: 私たちの「買われ残り」指標
私たちの主軸は、締切2分前のオッズから計算する自作の指標です。仕組みは単純で、
単勝と馬連の売れ方から「この馬が3着以内に入る確率」を逆算し、
複勝のオッズがそれより甘い(=複勝だけ売れ残っている)馬を探します。
この「買われ残り」の強い馬の複勝は、検証年で約94円。
断然人気がいるレースに絞ると103円——私たちの前向き検証の主力です。
実験: 同じ物差しで単勝を測る
「買われ残り」の強さで全馬を10段階に分け、各段の単勝を測りました。
払い戻しは確定オッズで計算します(過去に朝一オッズで計算して9円ずれた事故があり、
以来ここは指差し確認です)。
| 買われ残りの強さ | 単勝回収(検証年) |
|---|---|
| 最弱(複勝が割高な馬) | 67円 |
| 中位 | 60〜90円 |
| 最強(複勝が割安な馬) | 85円 |
きれいな右肩上がり。そして、どの段も100円に届かない。
主力セルの該当馬に絞っても、複勝103円に対して単勝は90円でした。
結論: 単勝には乗り換えない。複勝が正しい器。
想定外だったのは「外れ方」
実は測る前に、逆の予測を凍結していました。
「複勝が売れ残っている馬は、裏を返せば単勝では相対的に売れている。
だから買われ残りの強い馬の単勝は割高のはず」——プール間の綱引きの理屈です。
実測は逆でした。複勝で割安な馬は、単勝でも(弱いながら)割安だった。
これは指標の意味を書き換えます。私たちの「買われ残り」は、
複勝プールと単勝プールのあいだの歪みを拾っているのではなく、
市場全体がその馬を見落としていることを検出していたのです。
複勝側の見落としがより深いだけで、見落とし自体は両プールに共通していました。
では、見落としが深い「場所」はあるのか
機構がわかれば次の問いは自然です。市場の見落としが深くなる場所——
注意が薄いレース——があるなら、そこに絞れば強くなるはずです。
この仮説で、場所を6通り測りました。クラス(未勝利〜オープン)、
出走経験の浅い馬の割合、前走からの間隔、指標が発生した時刻、
そして手持ちの全変数の総当たり100通り。
6連敗でした。 どの場所で切っても、指標の強さは変わりません。
市場は未勝利戦でも、新顔だらけのレースでも、値付けをほぼ間違えない。
見落としは「場所」からは生まれない——これが6回分の答えです。
唯一の例外: 頭数
ただ1つだけ、両期間で再現する勾配がありました。出走頭数です。
| レースの頭数 | 買われ残り上位の複勝(検証年) |
|---|---|
| 15頭以上 | 93.4円 |
| 11〜14頭 | 90.8円 |
| 10頭以下 | 101.0円 [89.6, 113.2]・年395点 |
10頭以下のレースでは、買われ残り指標が100円の壁を越えます。
探索期でも同じ形(6区分中で最良)が出ており、偶然の山とは考えにくい。
そこでこれを Cell-F(乖離×少頭数) として定義を凍結し、
既存のセルたちと同じ前向き検証(未来のデータでの判定)に載せました。
嬉しい誤算は流量で、主力セルの約3倍発火します。判定に必要な300点には
今年の12月頃に到達する見込み——主力より早く白黒がつきます。
なお「なぜ頭数だけ効くのか」はまだ説明できていません。
確率計算の精度が頭数で変わる説を測って否定済みなので、
残る候補は「少頭数では複勝の値付けが粗い」——ここは宿題です。
今回の教訓
- 問いを潰すと機構が残る。 単勝は儲からなかったが、「指標は市場全体の
見落としを検出している」という理解が手に入り、それが次の探索の地図になった - 6連敗の記録も資産。 どの場所でも効かないと分かったから、
唯一の例外(頭数)が信じられる - 前向き検証中のセルは、これで4本(うち3本が同じ指標の系譜)。
110%は「1つの大当たり」ではなく、こうして1本ずつ増える検証の束から来る——
今のところ、そう信じられる数字が並んでいます
(次回予告: この週末から、自作ロジックのセルが初めて実弾になりました。
紙の上の110円が、口座の中で何円になるか。数か月後に答え合わせをします。)
うん、やっぱりこの器だ。替えてみて、よく分かった。


