AIでJRAの回収率110%を目指す検証(第30回)|「オッズ断層」を4年分で測ったら、線の上と下で6.8pt違った【追記あり】

「オッズ断層」を4年分で測ったら、線の上と下で6.8pt違った 実験ログ

この後どうなったか: この回は、線を「レース内でいちばん開いた場所」という当方の定義で引いて測りました。参照したサービスが実際に引いている線は、対象の券種・判定の順序・段階の数がこの定義と異なることを第36回で確かめており、この回の数字は当方の定義での値です(サービスの線そのものの回収率は、第36回の時点でまだ測っていません)。

有料の競馬オッズ解析サービスが売っている機能に「オッズ断層」があります。
単勝オッズを人気順に並べたとき、急に開く場所に線を引く、というものです。
「ここまでが本命グループ」という境界線として売られています。

JRA 4年分・11,783レースで測りました。
線の下を買うか、上を買うかで、複勝の回収率が 6.8pt 違いました。

この検証について

JRAのレースを対象に、公開データだけで回収率110%が成立するかを検証しています。
的中率ではなく回収率を見ます。当たっても払戻が控除率を超えなければ、当たった意味はありません。

これまで93回の実験をしています。今回は93回目です。


1. 測ったもの

朝一(8時40分時点)の単勝オッズを、安い順に並べます。
隣り合う2頭の比を取って、レース内でいちばん大きく開いた場所を「断層」とします。

例:1.7倍 → 4.8倍(2.82倍に開く)→ 8.4倍 → 9.5倍 …
        ↑ ここが断層

買い方は2通りあります。

  • 直下:開いた先の馬(この例なら4.8倍)。「本命グループから漏れた先頭」
  • 直上:開く手前の馬(この例なら1.7倍)。「本命グループの最後尾」

もう1つ、馬連の凹みも測りました。
馬連のオッズを安い順に並べた順位と、2頭の単勝人気の合計から期待される順位を比べ、
実際のほうが不自然に安い組を「凹み」とします。「まとめて買われている気配」として売られている機能です。

券種は複勝1点に統一しました。この検証の主戦場だからです。

閾値は借りていません

参照したサービスは「1.4-1.5倍 / 1.5-2.0倍 / 2.0倍以上」の3段階で色を付けています。
その境界がどう決まったかは公開されていないので、使いませんでした。
代わりに「レース内でいちばん開いた場所」という順位だけで決めています。これなら誰でも再現できます。


2. 母集団

期間      2021-01-01 〜 2024-12-31
対象      JRA10場のみ
除外      障害・新馬・7頭以下のレース
条件      朝一のオッズが取れたレース
最終      164,334頭 / 11,783レース

障害は平地とは別の競技なので外しました。新馬は前走がないので外しました。
「全レース」も1つの選択なので、何を外したかは先に書いておきます。

比較の相手(対照)は、同じ単勝オッズ帯の馬です。
これを揃えないと「人気馬を買っただけ」が効果に見えてしまいます。


3. 結果 — 全体では決着しませんでした

買い方 該当 回収率リフト 95%区間 絶対回収率
A 断層の直下 11,725頭 −0.7pt −5.4 〜 +4.2 72.1%
A’ 断層の直上 11,728頭 +1.6pt −1.7 〜 +4.9 78.9%
B 馬連の凹み 23,369頭 −0.3pt −4.0 〜 +3.3 70.2%

3つとも、区間が0を跨いでいます。 つまり「効く」とも「効かない」とも言えていません。

それでも、線の上と下で 6.8pt 違います

同じ1本の線の、上を買うか下を買うかだけで、絶対回収率が 72.1% と 78.9%。
的中率のリフトも +0.3pt と +1.8pt で、直上のほうが当たっています。

参照サービスは断層を「本命グループの上限を示す線」として描いています。
線そのものより、線のどちら側にいるかのほうが情報を持っている、という結果でした。

ただし、これは「安い馬を買っただけ」かもしれません

この検証では、リフトが出たときに必ず帯の中の位置を見ます。
同じ「4-7倍」の帯でも、4.1倍と6.9倍では当たりやすさが違うからです。

  • 直下:0.54(帯の中でやや人気薄寄り)
  • 直上:0.43(帯の中で人気側に寄っている)

0.50から離れているほど、「技」ではなく「帯の中の安い馬を抜き取っただけ」の疑いが濃くなります。
直上の +1.6pt には、この疑いが残ります。
当たったときの配当が対照より 13.8pt 低いことも、同じ方向を指しています。


4. 層で分けると、符号が反転しました

クラス(未勝利/条件/オープン)と芝ダートで6つに分けて測り直しました。
18セル中、決着したのは2つだけです。どちらも「直上」でした。

層 回収率リフト 95%区間 絶対回収率 判定
条件戦・ダート +10.5pt +3.1 〜 +18.3 88.1% 区間の下限が0を超えた
未勝利・芝 −12.1pt −18.1 〜 −5.6 66.8% 区間の上限が0を下回った

同じ買い方が、片方の層では勝ち、もう片方では負けています。
そして全体の +1.6pt は、この2つが打ち消し合った平均でした。

これは今回いちばん大きな学びです。
1つの数字を全レースに当てはめるのは無理がある。 条件戦のダートと未勝利の芝は、別の競技です。

なお「条件戦ダートで+10.5pt」を成果として受け取るのは早すぎます。理由は3つあります。

  1. 帯の中の位置が0.44で、安い馬を抜いただけの疑いが残る
  2. 18セルを見て2つ当たったので、偶然当たる分の補正をしていない
  3. 「直上も測る」は最初の設計に無く、後から足した買い方です

5. 馬連の凹みは、方向がはっきりしました

回収率のリフトは −0.3pt で決着していません。
ただし当たったときの配当を見ると、対照より 34.7pt 低いという結果でした。
オープン戦の芝では 75.8pt 低くなります。

「馬連でまとめて買われている組」は、当たっても配当が安い。
つまり、まとめて買われている分だけすでに割高になっている、という素直な結果です。


6. おまけ — 参照サービスの「2.0倍」は、当てずっぽうではありませんでした

閾値は借りませんでしたが、位置は確かめました。
JRA 4年分の隣接オッズ比 174,510本の分布はこうなっています。

中央値 1.209 / 75%点 1.450 / 90%点 1.848 / 95%点 2.222 / 99%点 3.526

参照サービスの境界を当てはめると:

境界 全体の何% 1レースあたり何本
1.4倍以上 28.7% 3.65本
1.5倍以上 22.1% 2.81本
2.0倍以上 7.6% 0.96本

2.0倍は、ちょうど「1レースに1本だけ線が引かれる」位置でした。
偶然にしてはうまい場所です。借りはしませんが、無根拠ではなかったと分かりました。


7. まとめ

オッズ断層(直下)  −0.7pt [−5.4, +4.2]   絶対回収 72.1%   決着せず
オッズ断層(直上)  +1.6pt [−1.7, +4.9]   絶対回収 78.9%   決着せず
馬連の凹み          −0.3pt [−4.0, +3.3]   絶対回収 70.2%   決着せず

3つとも「効くとも効かないとも言えない」で終わりました。
回収率110%までの距離は、いちばん良い直上でも 31pt あります。

それでも、測る前には分からなかったことが3つ残りました。

  1. 線の上と下で 6.8pt 違う。 断層を使うなら、どちら側かを決めるのが先
  2. 層で符号が反転する。 条件戦ダートと未勝利芝で +10.5pt と −12.1pt
  3. 馬連で買われている組は、当たっても配当が安い(−34.7pt)

これらは4年分・全レースをまとめて見ていたら、平均に埋もれて見えませんでした。


免責

本記事は検証の記録であり、馬券の購入を勧めるものではありません。
掲載した数値はすべて2021-2024年のJRAデータに対する過去データ上の測定で、
将来の成績を約束するものではありません。馬券の購入は自己責任でお願いします。

線を誰が引いたかで、景色は変わる。まだ箸はつけまい。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

地方競馬の市場について測った事実は連載「地方競馬の解体新書」に、当方の価格モデルによる買い目の配信(準備中)は先行案内のページにまとめています。