AIでJRAの回収率110%を目指す検証(第11回)|ワイドでも天井は越えられなかった

ワイドでも天井は越えられなかった 実験ログ

複勝の回収率は98%で頭打ちになりました。原因は元返し1.0倍という配当の床です。ならば床のないワイドなら越えられるのではないか。18通りの買い方を1万レースで検証しました。

天井の正体

この検証で最も良かった数字は、単勝1.3倍以下の1番人気の複勝、98.2%でした。100%には届いていません。

届かない理由は構造的なものでした。

単勝オッズ帯 複勝的中率 平均複勝配当 回収率
〜1.1倍 94.9% 1.03倍 97.3%
1.2〜1.3倍 93.4% 1.07倍 99.8%
1.5〜1.8倍 78.8% 1.11倍 87.5%

複勝には元返し1.0倍という配当の下限があります。人気を突き詰めるほど的中率は上がりますが、配当が1.03倍まで薄くなる。的中率の上限と配当の下限が、ちょうど100%の手前で釣り合っています。

ここで次の指摘が出ました。

複勝1点で100%を超えるのは至難だが、93%超の馬を絡めたワイドなら100%を超える買い目があるのではないか。

診断としては正確です。天井の原因は控除率ではなく配当の床であり、ワイドにその床はありません。理屈のうえでは逃げ道になります。

実行前に置いた計算

検証する前に、越えるべき水準を計算しました。結果を見てから理屈をつけないためです。

馬券種 払戻率
複勝 80.0%
ワイド 77.5%

ワイドのほうが控除率が2.5ポイント重いという事実がまずあります。

断然人気の複勝98.2%は、プール平均の80%に対して1.228倍の優位を持っています。もし同じ優位がそのままワイドに移るだけなら、

77.5% × 1.228 = 95.2%

100%には届きません。届くには1.29倍以上、つまり複勝プールより強い歪みがワイドプール側に必要になります。

一方で、追い風の材料もありました。以前の検証で、全ワイドを等しく買った場合の回収率が60.6%でした。払戻率は77.5%です。等加重が払戻率を17ポイントも下回るということは、金額加重では77.5%になるわけで、人気薄の組み合わせが買われすぎ、人気サイドの組み合わせは77.5%より高いはずだという読みが成り立ちます。

やってみる価値はある、という判断でした。

統計上の落とし穴

検証の前に、ひとつ処理を入れています。

同じレース内の複数の買い目は、強く相関します。 軸馬が同じだからです。軸が3着以内に来なければ、その馬を絡めた買い目はすべて外れます。これを独立した試行として数えると、信頼区間が不当に狭くなります。

模擬データで確認しました。

95%信頼区間の幅
素の信頼区間 ±7.3pt
レース単位でまとめた場合 ±20.8pt

約3倍違います。 この処理をせずに検証していれば、ほぼ確実に「エッジ発見」という誤った結論に達していました。この検証では過去に3度、有望に見えた数字が消えています。同じ轍は踏めません。

すべての数値をレース単位にまとめてから信頼区間を計算しています。

結果

2023年から2025年、ワイドが確定した10,365レース、買い目130,765点。軸の単勝オッズ3水準と、相手の人気6区分の組み合わせです。

軸 相手 レース 回収率 95%区間
≤1.3倍 複勝(比較用) 281 98.0% 94.9〜101.1%
≤1.3倍 2番人気 279 90.5% 80.2〜100.7%
≤1.3倍 3番人気 279 93.6% 79.6〜107.6%
≤1.3倍 4-5番人気 281 72.2% 60.4〜84.1%
≤1.3倍 6-8番人気 272 85.7% 69.2〜102.2%
≤1.3倍 9番人気以下 221 46.2% 19.6〜72.8%
≤1.3倍 全点流し 281 70.4% 64.5〜76.2%
≤1.5倍 複勝(比較用) 793 95.6% 93.3〜98.0%
≤1.5倍 2番人気 789 85.0% 78.7〜91.3%
≤1.5倍 3番人気 790 82.8% 74.5〜91.1%
≤1.5倍 4-5番人気 793 80.6% 73.2〜88.0%
≤1.5倍 6-8番人気 775 75.5% 65.9〜85.1%
≤1.5倍 9番人気以下 660 56.6% 42.5〜70.7%
≤1.5倍 全点流し 793 72.5% 67.9〜77.2%
≤2.0倍 複勝(比較用) 2,984 89.1% 87.4〜90.7%
≤2.0倍 2番人気 2,969 82.6% 79.0〜86.2%
≤2.0倍 3番人気 2,970 80.6% 76.1〜85.1%
≤2.0倍 4-5番人気 2,984 78.8% 74.8〜82.9%
≤2.0倍 6-8番人気 2,955 74.3% 69.2〜79.4%
≤2.0倍 9番人気以下 2,613 64.0% 55.1〜72.9%
≤2.0倍 全点流し 2,984 73.2% 70.2〜76.3%

18通りすべてで、信頼区間の下限が100%を下回りました。

計算どおりだった

実行前の予想値は94.9%でした。実測の最良は93.6%(軸1.3倍以下、相手3番人気)です。

複勝の優位はワイドにほぼ比例して移りますが、比例よりわずかに弱い。 控除率2.5ポイントの差が、そのまま結果に出ました。

複勝に勝てた買い方がひとつもない

より重要なのはこちらです。

軸 複勝 ワイドの最良 差
≤1.3倍 98.0% 93.6% −4.4pt
≤1.5倍 95.6% 85.0% −10.6pt
≤2.0倍 89.1% 82.6% −6.5pt

軸馬の複勝を買うほうが、その馬を絡めたどのワイドよりも良い。 例外はありませんでした。

理由は結果の並び方に出ています。相手の人気が下がるほど、回収率が単調に悪化します(2番人気82.6% → 9番人気以下64.0%)。ワイドのプールの中でも、人気薄は買われすぎているということです。

構造としてはこう理解できます。

複勝は「市場の歪みが自分に有利に働く1頭だけ」を買う行為。ワイドはそこに、価格を出し抜けない2頭目を足す行為。

98%の資産を、75〜80%の資産で薄めています。しかも控除率を2.5ポイント多く払っている。良い賭けと中立な賭けを組み合わせても、より良い賭けにはなりません。

馬券種を変える道が閉じた

この論理は、ワイドに限りません。

馬券種 払戻率 必要な脚
複勝 80.0% 1
ワイド・馬連・馬単・枠連 77.5% 2
3連複 75.0% 3
3連単 72.5% 3

組み合わせ馬券はすべて、複勝より控除率が重く、かつ追加の脚を要求します。 追加の脚で市場を出し抜けるなら話は別ですが、この検証ではそれを13の系統で試して、すべて否定されています。

馬券種を変えて100%を超える、という道はここで閉じました。

相手を自作の指数で選んだ場合

ここで当然の疑問が出ます。相手の選び方が悪いのではないか。人気で機械的に区切るのではなく、自作のスピード指数で上位の馬を相手にすれば違うのではないか。

これは筋の通った指摘です。人気で絞るのは市場自身のランキングを使うことなので、そこに優位が生まれる余地は原理的にありません。一方、自作の指数は市場と部分的に独立したランキングです。「指数は高いのに人気がない馬」は、市場との意見の相違がある場所ということになります。

そこで、同じ3点で相手の選び方だけを変えて比較しました。軸を除いた指数上位3頭と、軸を除いた人気上位3頭(つまり2〜4番人気)です。

軸 指数で選んだ3点 人気で選んだ3点 差
≤1.3倍 81.9% 84.4% −2.5pt
≤1.5倍 82.8% 81.9% +0.9pt
≤2.0倍 80.9% 81.8% −0.9pt

互角でした。 差は最大2.5ポイント、信頼区間の幅の3分の1以下です。指数が人気を上回ったのは3水準のうち1つだけでした。

この結果を決定的にしているのは、同時に測った二つの数字です。

診断 値
指数で選んだ3頭と人気で選んだ3頭の重複率 53〜56%
軸(1番人気)が指数でも1位である割合 28.4%

重複率が半分ということは、両者は半分の馬について違う判断をしているという意味です。比較として成立していました。同じ買い目を別の名前で呼んでいたわけではありません。

そして28.4%という数字は、自作の指数が7割のレースで市場とは違う馬を最上位に置いていることを示します。大きく食い違っているのです。

半分は違う馬を選んでいるのに、返ってくる金額が同じ。 市場との意見の相違そのものに、価値がありませんでした。

この検証ではこれまで、モデルが市場に上積みできるかを何度も測ってきました。結果はいつも「上積みはゼロ」でしたが、それは回帰係数という抽象的な形をしていました。今回のは具体的です。別の馬を選んで、同じ金額が返ってくる。

惜しい数字の扱いについて

表の中に、単独で見れば期待させる数字があります。軸1.3倍以下、相手6-8番人気の85.7%は、信頼区間の上限が102.2%です。

しかしこれは軸を1.5倍以下に広げると75.5%、2.0倍以下では74.3%になります。閾値を変えると再現しません。

指数で選んだ場合にも同じ形が出ています。軸1.3倍以下で「指数1位(軸を除く)」を1点買うと95.2%、上限は112.2%です。しかし軸を1.5倍以下にすると88.0%、2.0倍以下では80.6%と、閾値を緩めるにつれて単調に減衰します。件数は258で、区間の幅は±17ポイントあります。

3つの閾値を通して見ると、相手の人気が下がるほど悪化するという単調な構造が一貫しています。その構造から外れた1セルだけが良く見えるとき、それは構造ではなくばらつきです。点推定ではなく、構造の一貫性で読む必要があります。

まとめ

項目 結果
複勝の天井の原因 元返し1.0倍の床(診断は正しい)
ワイドに床はあるか ない(逃げ道としての着眼は正しい)
実行前の予想値 94.9%
実測の最良 93.6%(軸1.3倍以下×相手3番人気)
100%を超えたセル 18通り中ゼロ
複勝に勝ったセル ゼロ
相手を自作指数で選ぶと 人気で選ぶのと互角(差±2.5pt以内、1勝2敗)
指数と人気の重複率 53〜56%(=比較には検出力があった)
軸が指数1位でもある割合 28.4%(=7割は市場と意見が違う)
構造的な理由 控除率が2.5pt重く、出し抜けない2頭目を足すことになる

配当の床から逃げることはできました。ただし逃げた先で、より重い控除率と、価格を出し抜けないもう1頭が待っていました。


本記事はAIが下書きを生成し、人間が公開可否を判断しています。掲載した数値はすべて実データによる分析結果であり、恣意的な抽出は行っていません。本記事は情報提供を目的としたものであり、馬券の購入を勧誘するものではありません。

床から逃げた先に、もっと重い勘定が待っていた。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

地方競馬の市場について測った事実は連載「地方競馬の解体新書」に、当方の価格モデルによる買い目の配信(準備中)は先行案内のページにまとめています。