AIで回収率110%を目指す検証(第55回)|解体新書の検証回①:「常に下位の馬」「上位騎手からの降格」は締切前の値段でも過大に値付けされていた。だが、モデルにとっては新しい情報ではなかった【追記あり】

「常に下位の馬」「上位騎手からの降格」は締切前の値段でも過大に値付けされていた 実験ログ

この後どうなったか: この回で「区別できない」とした「前走と同じクラス・同じ組にとどまった1番人気」は、比較の相手を締切3分前の1番人気の全体に直して測り直すと、複勝回収率が他の1番人気より6.5ポイント低く(90%区間 −10.7〜−2.3)、過大に値付けされていました(第56回)。

— 「常に下位の馬」「上位騎手からの降格」は締切前の値段でも過大に値付けされていた。だが、モデルにとっては新しい情報ではなかった

問い

連載「地方競馬の解体新書」は、確定オッズによる「地図」でした。地図に見えた「消し材料」は、締切前の買える値段でも本当に効くのでしょうか。そして、私たちが使っている選別モデルにとって、それは新しい情報でしょうか。

今回は解体新書の第5回・第7回・第3回から、消す側の規則を3つ選び、一つの事前登録にまとめて測りました。3つは互いに独立に判定し、良いものを後から選ぶことはしません。

腕 出どころ 規則
A 第5回 直近5走がすべて6着以下で、その5走の平均人気が8番人気以下の馬(「常に下位・大穴」)
B 第7回 前年のその場の勝利数で上位15位以内だった騎手から、それ以外の騎手への乗り替わり(「上位騎手からの降格」)
C 第3回 前走とクラスも組も同じ馬が、締切3分前の時点で1番人気

事前登録した判定規則

各腕で二つを見ます。

  • (i) 市場はその馬を過大に値付けしているか。 該当する馬 X と該当しない馬で、締切3分前の値段による複勝回収率(片側95%区間)と、単勝の「実際の的中と市場の見立ての比から損益分岐を引いた値」を比べます。X の複勝回収率の上限が非該当の点推定を下回り、かつ単勝の指標も下回れば「過大に値付けしている」と判定します。
  • (ii) 私たちの選別から X を外すと上乗せがあるか。 価格補正つきの選別(これまでの地方の検証と同じもの)から X を外した集合と外す前の集合で、同じ日ごとに対にした差の片側95%下限が 0 を上回れば「外す規則は実在」と判定します。外す頭数が2%未満なら「薄くて判定不能」と書きます。

母集団はこれまでの地方の検証と同じ地方13場・134開催日・46,201頭。封印期間(2026年1〜6月)は前走としても読んでいません。自己テストは以前の検証の数字の完全再現を含む7本で、全て通過しました(実装の写し漏れで2回止まり、直してから測っています)。

結果

腕 (i) X の複勝回収率 [片側95%] / 非該当 (i) 判定 (ii) 外した頭数 (ii) 差 [片側95%] (ii) 判定
A 常に下位・大穴 46.9% [38.5, 55.6] / 70.1% 過大に値付け 369(6.6%) +0.28 [−1.30, +1.70] ゼロと区別できない
B 上位騎手からの降格 61.4% [55.4, 67.9] / 70.3% 過大に値付け 654(7.7%) +0.16 [−1.20, +1.39] ゼロと区別できない
C 同条件の1番人気 83.3% [79.4, 87.2] / 68.0% 区別できない 137(2.4%) −0.25 [−0.42, −0.09] 外すと悪化

腕Aと腕Bは、締切前の値段でも過大に値付けされていました。 常に下位の馬の複勝回収率は 47%、上位騎手から降格した馬は 61% で、区間の上限が非該当の馬を下回ります。解体新書の地図(確定オッズ)で見えた数字が、買える値段でも残っていた、ということです。

しかし、私たちの選別から外しても上乗せはゼロでした。 選別に入っていた「常に下位」の馬(369頭)の複勝回収率は 84%、「降格」の馬(654頭)は 88% で、外した後の集合(88〜90%)と区別できません。価格補正と複勝確率のモデルが、これらの情報を既に吸収しているためと考えられます。以前の検証「前走の急落を足す」と同じ形の結果です。

腕Cについては、(i) の比較対象を「全馬」にした設計が不適切でした。1番人気を人気薄の馬と比べても意味がありません。公正な比較対象(締切前の1番人気の全体)は今回の登録に無いため測っておらず、次の登録に回します。(ii) は外すと悪化しており、同条件の1番人気を疑う根拠は見当たりませんでした。

事前予測との答え合わせ

予測 結果
腕A: (i) 過大 (ii) 判定不能 (i) 当たり (ii) 外れ(6.6%あり判定できた)
腕B: (i) 過大 (ii) 下限が正 (i) 当たり (ii) 外れ
腕C: (i) 区別できない (ii) 判定不能 (i) 当たり (ii) 外れ
(ii) で成立するのは1本以下 当たり(0本)
合格線(下限>100)は3本とも届かない 当たり

事前予測の通算は24回で11勝13敗です。

何が分かり、何が分からないか

分かったこと
– 「常に下位で走り続ける馬を穴として買わない」「上位騎手から降格した馬を嫌う」は、締切前の値段でも数字に合います。モデルを持たない読者にとっては、消し材料として実在する規則と考えられます。
– 価格補正つきの選別モデルにとっては、どちらも新しい情報ではありません。外しても上乗せはゼロです。
– 消す側の規則をモデルに足す線は、これで3本とも閉じました。生き残っているのは以前の検証の「前走で大きく見放された馬を外す」だけです。

分からないこと
– 各腕の定義は解体新書の地図(評価期間を含む全期間)で見た区分なので、条件の選択は完全に期間外ではありません。閾値は章で固定したものを動かしていませんが、真の確認は前向きの記録です。
– 腕Cの公正な比較は次の登録で扱います。


次回: 「同条件の1番人気」を、締切前の1番人気の全体と公正に比べ直します。あわせて、解体新書で残した「出走手当の表」に着手します。

見慣れた消し材料だった。比べる相手は、間違えていたが。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

地方競馬の市場について測った事実は連載「地方競馬の解体新書」に、当方の価格モデルによる買い目の配信(準備中)は先行案内のページにまとめています。