— 「前走と同じクラス・同じ組にとどまった1番人気」は、締切3分前の値段でも6.5ポイント過大に値付けされていた
問い
前回(第55回)は「消す側」の規則を3つ測り、1番人気に関する腕の比較設計が不適切だったことを書きました。1番人気を人気薄の馬と比べても意味がありません。今回はその直しです。比較対象を「締切3分前の時点で1番人気の全体」に固定し、1番人気の中で「疑う根拠がある」とされた3つの集合を、他の1番人気と比べます。
| 腕 | 出どころ | 1番人気のうち疑う集合 |
|---|---|---|
| C1 | 解体新書 第3回 | 前走と同じクラス・同じ組にとどまった馬(同条件) |
| C2 | 解体新書 第4回 | 中央から転入して11戦目以降の馬(地図では1番人気の勝率が最も低かった) |
| C3 | 以前の検証で「外す」効果が出た集合 | 前走で大きく見放された馬(前走の確定オッズが締切前の1.3倍以上に上がった) |
事前登録した判定規則
各腕で、疑う集合 X と他の1番人気 X̄ を、締切3分前の値段による複勝回収率で比べます。X の片側95%区間の上限が X̄ の点推定を下回り、かつ単勝の指標(実際の的中と市場の見立ての比から損益分岐を引いた値)も下回れば「市場はその1番人気を過大に値付けしている」と判定します。同じ日ごとに対にした差の区間も併記します。3本は独立に判定し、良いものを後から選びません。合格線(回収率の下限が100を超えるか)は立てていません。1番人気の複勝は控除後で85〜90%が相場で、届く設計ではないからです。
母集団はこれまでの地方の検証と同じ地方13場・134開催日・46,201頭。締切3分前の1番人気は4,447頭(4,377レース・同率を含む)。自己テストは以前の検証の数字の完全再現を含む7本で、全て通過しました(実装の写し漏れで1回止まり、直してから測っています)。
結果
まず基準値です。締切3分前の1番人気全体の複勝回収率は 87.9%(片側95%区間 86.5〜89.3)、勝率は45%でした。事前予測(86〜90%)の範囲です。
| 腕 | X の頭数 | X の複勝回収率 [片側95%] | 他の1番人気 | 対の差 [片側95%] | 勝率 X / 他 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| C1 同条件 | 496 | 83.3% [79.4, 87.2] | 89.8% | −6.5 [−10.7, −2.3] | 35.7% / 46.5% | 過大に値付け |
| C2 転入11戦目以降 | 876 | 84.9% [81.2, 88.5] | 88.7% | −3.7 [−7.5, +0.1] | 39.0% / 45.4% | 区別できない |
| C3 前走で大きく見放された | 256 | 88.4% [82.4, 94.1] | 88.8% | −0.5 [−6.8, +5.5] | 43.4% / 44.4% | 区別できない |
同条件の1番人気は、締切3分前の値段でも過大に値付けされていました。 複勝回収率は 83.3% で、他の1番人気(89.8%)より 6.5 ポイント低く、対の差の区間はゼロを含みません。勝率は 36% で、他の1番人気の 47% を大きく下回ります。2つの折(2025年10〜12月、2026年7〜8月)で同じ向きでした。解体新書の第3回で確定オッズの地図に見えた「同条件の1番人気は最も弱い」が、買える値段でも残っていた、ということです。
前走で勝ちも負けもしなかった(クラスも組も動かなかった)馬が1番人気に推されるとき、市場が前走の人気を引きずって評価している可能性がある、と読めます。ただし機構はここでは確かめていません。
転入11戦目以降の1番人気は、複勝の区間の上限は他をわずかに下回りましたが、単勝の指標に差が無く、登録の判定では「区別できない」です。後半の折では −5.6 ポイントと大きく、次の期間で測り直す価値はありそうです。前走で大きく見放された1番人気は、他の1番人気と変わりませんでした。以前の検証で「外す」効果が出たのは中〜高オッズ側の選別の話で、1番人気には当てはまらないようです。
事前予測との答え合わせ
| 予測 | 結果 |
|---|---|
| 1番人気全体の複勝は 86〜90% | 当たり(87.9%) |
| C1 は区別できない | 外れ(過大に値付け) |
| C2 は区別できない | 当たり |
| C3 は過大に値付け | 外れ |
| 成立するのは1本以下 | 当たり(1本) |
事前予測の通算は25回で12勝13敗です。
何が分かり、何が分からないか
分かったこと
– 「前走と同じクラス・同じ組にとどまった1番人気」は、締切前の値段でも複勝で −6.5 ポイント、勝率で −11 ポイント。両折で同じ向き。
– これは買い目ではありません。1番人気の複勝は判定時点でも 88% で、外した残りが黒字になるわけではない。使い道は「その馬を軸にしない・相手に回さない」という消し材料です。
– 転入11戦目以降・前走で見放された1番人気は、他の1番人気と区別できませんでした。
分からないこと
– 条件の選択は解体新書の地図(評価期間を含む全期間)から来ているので、完全に期間外ではありません。閾値は動かしていませんが、真の確認は前向きの記録です。1日約3.7点・半年で約650点あれば、−6.5ポイントの差を片側95%で確かめられる見込みです。
– 「前走の人気を引きずる」という機構は、この検証では確かめていません。
次回: 出走手当の表(解体新書 第5回で残した課題)と、転入11戦目以降の1番人気の再測定。
同じ場所に居座る本命には、少し箸を控えよう。

