前回(第31回)、有料の競馬オッズ解析サービスの「数字つきの主張」を4本測って、こう書きました。
「着順に関する数字は小数第1位まで合った。回収に関する数字は3つとも外れた。」
その日のうちに、元記事を読み直しました。
条件を2つ落としていたのは、我々のほうでした。落とした条件を戻すと、外れていた回収2つが、両方とも主張値の区間に入ります。
この検証について
JRAのレースを対象に、公開データだけで回収率110%が成立するかを検証しています。
的中率ではなく回収率を見ます。当たっても払戻が控除率を超えなければ、当たった意味はありません。
母集団: 2021-2024年・中央10場・平地(障害を除く)・新馬を除く・8頭立て以上。
そのうち朝のオッズで1番人気だった 11,697頭が今回の対象です。
すべて探索期のデータでの検証で、将来の成績を約束するものではありません。
何を落としていたか
前回測った主張のうち2本について、元記事にはこう書かれていました。
主張A(前回の検証3)
朝の1番人気が、直前に2番人気以下へ落ちたケース。
9〜12レースを対象とすると、勝率21.2% / 連対率35.7% / 複勝率47.8% /
単勝回収102 / 複勝回収90。
我々は「9〜12レースを対象」を落として、全レースで測っていました。
主張B(前回の検証4)
朝の1番人気だった馬が、最終的に4人気以下にまで落ちたケース。
このタイプの馬は単勝回収値118を記録している。
我々は「1番人気の話」を「穴馬の話」と読み違えて、まったく別の馬を測っていました。
つまり前回の検証4(実測72.80%・「主張の118に対して差は45pt」)は、
主張Bの反証になっていません。測っていた対象が違います。
測り直しました
条件を2つとも戻して、同じ4年分で測り直します。
測る前に、母集団・条件・判定の基準・こちらの予測を書いて記録に残してから測っています(前回と同じ手順です)。
該当したのは、朝の1番人気11,697頭のうち——
| 頭数 | 割合 | |
|---|---|---|
| 直前も1番人気のまま | 8,950 | 76.5% |
| 直前に2番人気以下へ | 2,747 | 23.5% |
| うち9〜12レース(主張Aの条件) | 1,114 | |
| 直前に4番人気以下へ(主張Bの条件) | 397 | 3.4% |
結果1|主張A — 5つとも再現しました
朝の1番人気 → 直前に2番人気以下 → 9〜12レース限定(1,114頭)
| 我々の実測(95%区間) | 主張 | ||
|---|---|---|---|
| 勝率 | 21.27%(18.85〜23.61) | 21.2% | ✅ |
| 連対率 | 36.45%(33.57〜39.14) | 35.7% | ✅ |
| 複勝率 | 48.11%(45.24〜50.99) | 47.8% | ✅ |
| 単勝回収 | 99.63%(87.31〜112.21) | 102 | ✅ |
| 複勝回収 | 90.39%(84.51〜96.48) | 90 | ✅ |
前回 ❌ を付けた2つが、両方とも ✅ になりました。
結果2|動いたのは回収だけです
同じ条件で、「9〜12レース」を入れた場合と入れない場合を並べます。
| 頭数 | 勝率 | 単勝回収 | 複勝回収 | |
|---|---|---|---|---|
| 9〜12レース限定(主張どおり) | 1,114 | 21.27% | 99.63% ✅ | 90.39% ✅ |
| 全レース(前回の測り方) | 2,747 | 20.93% | 93.34% ❌ | 86.45% ❌ |
着順(勝率)はほとんど動きません。21.27% と 20.93% です。
動くのは回収だけ。単勝で6.3pt、複勝で3.9pt。
同じ性質の馬が、後半のレースでは配当が付いているということです。
前回の記事で「着順は合うのに回収だけ8〜9pt ずれる」と書いて、
理由が分からないまま出しました。理由はここにありました。
ずれていたのは相手の数字ではなく、我々が並べていたレースの範囲です。
結果3|主張B — 区間には入ります。ただし買えません
朝の1番人気 → 直前に4番人気以下(397頭)
| 我々の実測(95%区間) | 主張 | ||
|---|---|---|---|
| 勝率 | 15.11%(11.84〜18.64) | — | |
| 連対率 | 26.45%(22.17〜30.98) | — | |
| 複勝率 | 34.26%(29.72〜39.04) | — | |
| 単勝回収 | 114.69%(87.36〜144.44) | 118 | ✅ |
| 複勝回収 | 86.05%(73.70〜99.58) | — |
点の数字は114.69%。主張の118は区間の中にあります。
それでも、我々はこれを買いません。
区間の下限が87.36%だからです。
397頭では、114.69%と100%を区別できません。
「4年分で平均すると100を超えていた」ことと「次の1年も超える」ことは別です。
この点は測る前に予告してありました。
「397頭では区間が広く、決着しない可能性が高い」と書いてから測っています。
決着しなかったので、決着しなかったと書きます。
結果4|落ちるほど回収は上がる。ただし一直線ではない
直前に何番人気まで落ちたかで分けます。
| 直前の人気 | 頭数 | 勝率 | 単勝回収 | 95%区間 |
|---|---|---|---|---|
| 1番人気のまま | 8,950 | 35.22% | 80.81% | 78.35〜83.29 |
| 2番人気 | 1,713 | 23.88% | 91.87% | 84.12〜99.95 |
| 3番人気 | 637 | 16.64% | 84.00% | 69.15〜100.25 |
| 4番人気 | 240 | 17.92% | 121.62% | 87.12〜159.76 |
| 5番人気以下 | 157 | 10.83% | 104.08% | 58.28〜157.90 |
「落ちるほど当たらないが、落ちるほど回収は上がる」向きは出ています。
ただし一直線ではありません。3番人気で84.00%に下がります。
4番人気の121.62%を見て「4番人気だけ買えばいい」とはしません。
240頭しかなく、区間は87〜160%です。
どこで切ると良いかを探し始めた時点で、探した本人に都合の良い数字が出ます。
今回は元記事の切り方(2番人気以下・4番人気以下)だけで判定しています。
年ごとに見ても、4番人気以下の単勝回収は
120.36% / 89.70% / 121.20% / 129.11%。
4年のうち1年は90%を割ります。年あたり79〜111頭しかない数字です。
それで、いくら儲かるのか
主張Aの条件で、主張どおりの数字が出たとして——単勝回収は99.63%です。
日本の単勝の控除率は約20%。
何も考えずに買えば、平均して80円ちょっとしか返ってきません。
99.63%は、そこから19pt以上を取り返しているということです。
それでも100を超えていません。
「主張は正確だった」と「その通りにやれば儲かる」は、別の話です。
今回いちばん効いた教訓
「相手の数字が外れた」と書く前に、自分が条件を落としていないかを確かめる。
前回の記事を書いた時点で、我々は元記事の該当箇所を読んでいました。
それでも「9〜12レースを対象」の一行と、「1番人気の話である」ことを落としました。
落としたことに気づいたのは、公開前の読み直しのときです。
落とした結果は「相手が外れている」という方向にだけ出ました。
これは偶然ではありません。
条件を外して母集団を広げると、たいていの効果は薄まります。
薄まった数字を主張値と比べれば、主張は外れているように見えます。
相手の主張を検証するときは、条件を1つずつ声に出して確認する。
これは相手のための作法ではなく、自分が間違えないための作法です。
次にやること
主張Aは我々の4年分で再現しました。ただし単勝回収99.63%では買えません。
主張Bは区間に主張値を含みますが、397頭では決着しません。
どちらも「この条件だけで回収率110%になる」道ではありませんでした。
我々の側で、まだ一度も測っていないことが1つあります。
これまでの実験は、全部「1点あたり同じ金額」で買っています。
何を買うかではなく、いくら賭けるかを変えたら回収率がどう動くか。
次はそこを測ります。
本記事は探索期(2021-2024年)のデータによる検証記録です。
将来の的中・回収を保証するものではありません。馬券の購入は自己責任でお願いします。
失礼した。品書きを最後まで読んでいなかったのは、こっちだ。


