AIで回収率110%を目指す検証(第46回)|市場に逆らった予想は5回連続で負けた。月2,880円のデータを1日で検証して分かった「予想は買えない、買い目は買える」

市場に逆らった予想は5回連続で負けた 実験ログ

前回(第45回)は、自分の記録の穴を塞いだ話でした。今回は外部データを買った話です。
契約から検証完了まで1日。結論は「指数は買えたが、その使い方を3回間違えた」です。

何を買ったのか

JRDB という老舗のデータサービスと契約しました(月2,880円)。パドックでの馬の気配、独自の能力指数(IDM)、専門紙情報を集約した各種指数——JRA公式のデータにはない「人間の主観評価」が機械可読で手に入る、おそらく唯一のサービスです。

買う前に、検証の設計を凍結しました。何をどう測るか、合格の条件は何か。データを見てから決めると、必ず自分に甘い判定を作るからです(この連載で何度もやりました)。

過去データは2003年まで遡れました。2022〜2024年の3年分(約14万頭)をダウンロードし、固定長ファイルの仕様書から読み取り器を書き、手元のデータベースと突合。血統登録番号の一致率100%を確認してから測定に入りました。ここまでで半日です。

最初の検証は全滅した

凍結した設計はこうでした。私たちの現在の買い方(全レースで朝一1番人気の複勝を基本に、条件が揃ったレースだけ乗り換える方式・回収率88.10%)に、JRDBの指数を4層目として足す。

試したこと 結果
IDMがレース1位なのに人気薄 → その馬に乗り換え −1.13pt
JRDBの基準オッズが市場より高く評価 → 乗り換え −9.41pt
パドック指数1位の馬を買う −3.30pt

全部マイナス。特に2番目の負け方が重要でした。JRDBの基準オッズは、専門家の予想を集約した「あるべきオッズ」です。それが実際のオッズと食い違うとき、正しいのは市場のほうだった。

5回目で法則になった

実は、この形の負けは初めてではありません。

「市場より賢い」はずの予想 市場と食い違う馬を買った結果
自作の機械学習モデル(順位予測の精度では市場超え) −14.3pt
JRA公式のマイニング予想 −1.3pt
有料ツールの予測値の模倣 価格に戻るだけ
JRDBの基準オッズ −9.4pt
「JRDBが評価しない1番人気」から逃げる −1.7pt

5つの独立な予想が、追いかける方向でも逃げる方向でも、同じ形で負けました。「市場より賢い予想」を外から買ってきて、それに乗ることはできない。 これがこの検証で最も再現性の高い法則です。

唯一の例外は、以前検証した有料ツールの「買い目そのもの」でした(同条件で+6.78pt)。予想(オッズはこうあるべきだ)は買えないが、買い目(この馬を買え)は買える。奇妙ですが、データはそう言っています。

「まず素性を調べるのが王道では」

3連敗したところで、指摘を受けました。使い方を試す前に、各指数がそもそも何者なのかを調べるべきではないか。 そのとおりでした。賭け方を一切作らず、記述だけの分析をやり直しました。

分かったことが3つあります。

1. 指数10本の正体は「2家族と1人」だった。 騎手指数・情報指数・調教指数・厩舎指数・人気指数・基準人気・パドック指数の7本は、互いの相関が0.7〜0.95。実質1本であり、しかも朝一の人気とほぼ同じもの。市場の言い換えです。一方、IDMと総合指数(相関0.99で同一)は市場との相関が0.3しかない、本当に独立な「能力の意見」でした。

2. 指数が市場の知らないことを言う場所は、1か所だけ。 人気帯を固定して指数の上下で成績を比べると、差が出るのは7番人気以下の帯だけでした。しかも効き方は「良い馬を見つける」ではなく、「下半分が死んでいる」。調教指数が帯の下半分の人気薄は、複勝率4.0%・回収61.6%。上半分との差は13ポイントです。

3. 上位人気については、市場は指数を織り込み済み。 1番人気の帯では、調教指数の上下で複勝率が71.5%対53.1%と大きく割れるのに、回収率の差は2.7ポイントに潰れます。フラグの立った1番人気は、ちゃんと安くなっている。市場は強い。

使いどころを正したら、1つだけ生き残った

地図に従って使い方を設計し直しました。市場に逆らわず、市場が迷っているところの審判として使う。

1番人気と2番人気のオッズがほぼ同じ(比1.25以内)とき——市場がどちらとも言っていないとき——だけ、IDMが高いほうを買う。この「接戦タイブレーク」は全体で+0.46pt、発火したレース内では+3.06pt。そして大当たり5本を除いても+1.44ptが残りました。この2日間のJRDB検証で、裾の当たりに頼らずプラスが残ったのはこれだけです。

現在の買い方に合成すると88.36%。全レースを買う方式としては過去最高を小さく更新しました。誤差の範囲の更新です。それでも、素性の地図が予言した場所に、予言した大きさの効果が出た——分析の順番を正せば、結果は地図から外れないことを確認できたのが、この日いちばんの収穫でした。

今回の教訓

  • 外部データは「買う前に検証設計を凍結」。データを見てから基準を作ると必ず甘くなる
  • 指数は名前ではなく相関で分類する。10本あっても独立な軸は2本だった
  • 予想は買えない。買い目は買える。市場と食い違う「意見」に賭けると、5回測って5回負けた
  • 指数の使い道は「良い馬探し」ではなく「死んだ人気薄の切り分け」と「接戦の審判」

※数字はすべて2022〜2024年・約8,800レースでの実測です。この期間は戦略の設計にも使ってきたため、確認は前向き検証(現在進行中・年末に判定)で行います。

次回は、切り分け役としての使い方(乗り換え先の品質検査)の結果を報告します。

他人の意見は買えない。迷ったときの審判くらいが、ちょうどいい。

この後の実験は、地方競馬に舞台を移しています。

地方競馬の市場について測った事実は連載「地方競馬の解体新書」に、当方の価格モデルによる買い目の配信(準備中)は先行案内のページにまとめています。