地方競馬の解体新書第11回第2部
1番人気が3着から消えると配当はどう変わるか(地方競馬・2021〜2025年・60,242レース)
今回の問い
複勝は、選んだ馬が3着以内に入れば当たる券種です。当たる確率が高いため、地方競馬で最初に手にする馬券として選ばれることの多い券種と考えられます。ただし、値段の決まり方は単勝とかなり違います。今回は次の三点を確かめます。
- 複勝の控除は、単勝と比べてどれほど重いか
- 払戻の下限である「100円元返し」は、どこで効いているか
- 1番人気が3着内から消えたとき、ほかの馬の複勝の配当はどう変わるか
データと方法
- 対象: 地方競馬(帯広を除く各場。園田と姫路を分けて数えると14場)・2021年1月〜2025年12月・出走8頭以上のレース(複勝が3着まで払われるレース)。60,242レース・632,287頭。
- 競走中止などの異常があった馬と、着順の無い馬は除いています。
- 1番人気は、確定単勝オッズの人気順で決めています。
- 払戻と回収率はすべて確定払戻による「地図」で、締切前に買える値段ではありません。回収率は「全頭を100円ずつ買ったときに戻る額の平均」を百分率にしたもので、買い目の主張ではありません。
- 控除率は、別に事前登録して測った記録(2024〜2025年)から引用しています。
- 第3節と第4節の前半の表は、1番人気が3着内に残ったか消えたかという結果で分けた区分です。レースの前には分かりません。
1. 複勝の実効控除率(約24%)
第8回では、地方の単勝の実効控除率(市場が実際に差し引いている割合)が 21.2% であることを見ました。複勝について同じ考え方で測ると、2024年は 24.22%(13,287レース)、2025年は 24.31%(12,988レース)でした。単勝より約3ポイント重く、年による動きは 0.1ポイントにとどまります。
この値は、各レースの全馬に複勝オッズ(幅の下限)に比例した額を賭けたとき、実際の払戻で戻る割合から計算しています。賭け方の約束を変えれば値は動くため、「複勝の控除率の唯一の定義」ではない点にご留意ください。それでも、「複勝は控除が軽いので単勝より有利」という見方は、地方の数字とは合いません。
控除の重さは、人気順ごとの回収率にそのまま表れます。全レースで各人気の馬の複勝を100円ずつ買うと、回収率は1番人気の 88.5% から12番人気の 55.8% まで、人気が下がるほど低くなります(第4節の表)。どの人気順でも100%には届いていません。
2. 払戻の床「100円元返し」
複勝の払戻は、計算上100円を下回る場合でも100円が戻る決まりになっています(元返し)。1番人気に票が極端に集まる複勝では、この床に当たる配当が珍しくありません。1番人気が3着内に残ったレースでは、3着内に入った馬135,146頭のうち 13.2% の払戻がちょうど100円でした。1番人気が消えたレースでは、45,716頭のうち 0.2% にすぎません。
1番人気の単勝オッズ(確定値)で帯を分けると、床の影響が見えてきます。
| 1番人気の確定単勝オッズ | レース数 | 1番人気が3着内に残った率 | 1番人気自身の複勝回収率 |
|---|---|---|---|
| 1.3倍以下 | 8,766 | 92.6% | 96.6% |
| 1.4〜1.6倍 | 10,628 | 84.9% | 92.8% |
| 1.7〜2.0倍 | 14,009 | 77.5% | 89.3% |
| 2.1〜2.5倍 | 13,234 | 69.8% | 86.6% |
| 2.6〜3.0倍 | 7,925 | 61.1% | 82.3% |
| 3.1〜4.0倍 | 4,979 | 53.0% | 79.1% |
| 4.1倍以上 | 701 | 43.1% | 77.2% |
地方・2021〜2025年・8頭以上・確定払戻の地図。「残った率」がそのまま1番人気の複勝の的中率です。
1番人気自身の複勝回収率は、単勝が短いほど高くなり(4.1倍以上で 77.2%、1.3倍以下で 96.6%)、どの帯でも100%に届きません。1.3倍以下の帯で的中時の平均払戻を逆算すると、約104円(96.6 ÷ 0.926)になります。的中時の払戻がこの水準のままなら、的中率が100%になったとしても回収率は約104%にとどまる計算です。本命の複勝は床のすぐ上に押し付けられており、「当たる確率を上げる」ことで伸ばせる余地は小さいと読めます。
3. 1番人気が3着から消えたレースの払戻
8頭以上のレースで1番人気が3着内に残った率は 74.71%(60,242レース)でした。4レースに1レースは、1番人気が3着から消えていることになります。第1回では頭数を問わない全レースで 75.7% でしたが、今回は複勝が3着まで払われる8頭以上に絞っているため、少し低く出ています。
残った率は場と頭数で動きます。場では大井の 70.4%(5,337レース)が最も低く、金沢の 79.6%(3,883レース)が最も高い結果でした。低いほうの4場は大井・川崎・浦和・船橋で、南関東がそろって並んでいます。頭数では、8〜9頭の 79.0%(17,489レース)から14頭以上の 68.0%(2,912レース)まで、頭数が増えるほど下がります。
では、1番人気が消えると複勝の配当はどう変わるのでしょうか。
| 区分 | レース数 | 3着内の馬の数 | 1頭の払戻 中央値 | 平均 | 100円(元返し)の割合 | 300円以上の割合 | 3頭の払戻合計 中央値 | 合計の平均 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1番人気が3着内に残った | 45,009 | 135,146 | 140円 | 208.4円 | 13.2% | 13.7% | 500円 | 625.8円 |
| 1番人気が3着から消えた | 15,233 | 45,716 | 230円 | 358.9円 | 0.2% | 35.2% | 850円 | 1,077.2円 |
地方・2021〜2025年・8頭以上・確定払戻の地図。結果を見た後の区分です。
1番人気が消えると、3着内の馬の払戻の中央値は140円から230円に上がり、300円以上の配当の割合は 13.7% から 35.2% に増えます。3頭分を合計した払戻も、中央値で500円から850円になります。
複勝の配当は一般に、的中した3頭の票の元本を戻したうえで、残りを3頭に等しく割り当てて計算すると説明されています。最も票を集めた1番人気が3着内に入ると、その元本を戻すだけで売上の多くが使われ、ほかの2頭の配当まで小さくなる計算です。1番人気が消えると、その票はほかの3頭の配当の原資に回ると読めます。
4. 結果で分けた表と、事前に見える量で分けた表
まず、全レースでの人気順ごとの複勝回収率です。
| 人気 | 頭数 | 3着内率 | 複勝回収率 |
|---|---|---|---|
| 1番人気 | 60,249 | 74.7% | 88.5% |
| 2番人気 | 60,100 | 58.6% | 81.2% |
| 3番人気 | 60,111 | 46.1% | 76.8% |
| 4番人気 | 60,134 | 35.8% | 72.5% |
| 5番人気 | 60,123 | 26.8% | 69.6% |
| 6番人気 | 60,093 | 20.3% | 69.1% |
| 7番人気 | 60,107 | 14.9% | 68.4% |
| 8番人気 | 60,123 | 10.4% | 66.3% |
地方・2021〜2025年・8頭以上・確定払戻の地図。3着内率は次の表の2区分を頭数で加重平均した値です。同じ人気順が2頭いるレースがあるため、1番人気の頭数はレース数より少し多くなっています。9〜12番人気の複勝回収率は 62.9%〜55.8% です(3着内率は未集計)。
次に、同じ表を「1番人気が3着内に残ったレース」と「消えたレース」に分けます。この区分は結果を見た後のもので、レースの前には分かりません。買い目にはなりません。
| 人気 | 残った:頭数 | 3着内率 | 複勝回収率 | 消えた:頭数 | 3着内率 | 複勝回収率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1番人気 | 45,015 | 100.0% | 118.4% | 15,234 | 0.0% | 0.0% |
| 2番人気 | 44,902 | 56.1% | 72.3% | 15,198 | 65.9% | 107.5% |
| 3番人気 | 44,905 | 42.4% | 65.3% | 15,206 | 57.2% | 110.8% |
| 4番人気 | 44,923 | 31.8% | 59.7% | 15,211 | 47.5% | 110.2% |
| 5番人気 | 44,908 | 23.0% | 55.4% | 15,215 | 38.0% | 111.5% |
| 6番人気 | 44,893 | 16.8% | 53.0% | 15,200 | 30.6% | 116.7% |
| 7番人気 | 44,907 | 12.3% | 52.4% | 15,200 | 22.4% | 115.9% |
| 8番人気 | 44,913 | 8.3% | 48.7% | 15,210 | 16.6% | 118.3% |
地方・2021〜2025年・8頭以上・確定払戻の地図。結果を見た後の区分です。
1番人気が消えたレースでは、2〜8番人気の複勝回収率がすべて100%を超えています(107.5〜118.3%)。1番人気が残ったレースでは、2番人気でも 72.3%、8番人気は 48.7% です。同じ人気順の馬でも、1番人気が3着内にいるかどうかだけで、回収率が 48.7〜72.3% から100%超へ入れ替わります。
結果で分けた表なので、ここから買い目は作れません。ただしこの表は、複勝という券種で何が勝負を分けているかをはっきり示しています。「1番人気が3着から消えるレース」を事前に見分けられれば、ほかの馬の複勝は控除を超える側に回る構造になっていると読めます。
では、事前に見える量で「消えそうなレース」を選ぶとどうなるでしょうか。1番人気の単勝オッズは、誰にでも見える量です。
| 1番人気の確定単勝オッズ | レース数 | 1番人気が消えた率 | 2〜5番人気の複勝回収率 | 全馬の複勝回収率 |
|---|---|---|---|---|
| 1.3倍以下 | 8,766 | 7.4% | 68.0% | 64.2% |
| 1.4〜1.6倍 | 10,628 | 15.1% | 72.3% | 66.7% |
| 1.7〜2.0倍 | 14,009 | 22.5% | 74.9% | 69.3% |
| 2.1〜2.5倍 | 13,234 | 30.2% | 77.3% | 72.0% |
| 2.6〜3.0倍 | 7,925 | 38.9% | 79.2% | 74.7% |
| 3.1〜4.0倍 | 4,979 | 47.0% | 80.3% | 79.0% |
| 4.1倍以上 | 701 | 56.9% | 78.6% | 83.2% |
地方・2021〜2025年・8頭以上・確定払戻の地図。2〜5番人気と全馬の3着内率はこの表では未集計です。
1番人気の単勝が長いほど、1番人気が消える率は 7.4% から 56.9% まで上がります。2〜5番人気の複勝回収率も 68.0% から 80% 前後まで上がり、全馬の複勝回収率は 64.2% から 83.2% まで上がります。それでも、どの帯でも100%には届きません。1番人気のオッズが示す「消える見込み」は市場にも見えており、その分がすでにほかの馬の複勝の値段に織り込まれていると読めます。
この表は確定オッズで帯を切っているため、締切前に見える1番人気のオッズとは少しずれます。発走3分前の買える値段で測った別の記録でも、形は同じです。馬自身の複勝オッズ(発走3分前の幅の中ほどの値)で7つの帯に分けると、回収率は次のとおりでした。
| 馬自身の複勝オッズ(発走3分前) | 頭数 | 複勝の的中率 | 複勝回収率 |
|---|---|---|---|
| 1.0倍超〜1.2倍 | 2,071 | 79.04% | 88.33% |
| 1.2倍超〜1.5倍 | 3,586 | 63.92% | 81.53% |
| 1.5倍超〜2.0倍 | 5,139 | 50.24% | 77.48% |
| 2.0倍超〜3.0倍 | 7,168 | 35.55% | 72.48% |
| 3.0倍超〜5.0倍 | 8,059 | 22.65% | 69.52% |
| 5.0倍超〜10倍 | 8,766 | 13.07% | 69.33% |
| 10倍超 | 10,733 | 4.49% | 56.94% |
地方・2025年10〜12月と2026年7月〜8月中旬の134開催日・4,377レース(7帯の合計45,522頭)。発走3分前の買える値段で帯を切り、払戻は確定払戻です。
締切前の値段で見ても、最も良い帯が 88.33% で、オッズが高くなるほど回収率は下がります。複勝で、オッズの帯を選ぶだけで控除を超える場所は見つかりませんでした。
ここで、問いは一つに絞られます。1番人気が3着から消える確率を、オッズが示している以上に正確に見積もれるかどうかです。1番人気のオッズは公開された情報で、市場はそれをすでに値段に織り込んでいます。当方の価格モデルが取り組んでいるのはまさにこの問いですが、それが控除を超えるかどうかは前向きの記録で確かめている途中であり、本稿では主張しません。
5. 分かったこと・分からないこと
分かったこと
– 地方の複勝の実効控除率は約24%(2024年 24.22%・2025年 24.31%)で、単勝の約21%より約3ポイント重い。
– 払戻には100円の床がある。1番人気が3着内に残ったレースでは、3着内の馬の 13.2% が100円(元返し)。1.3倍以下の1番人気の複勝は的中率 92.6%・回収率 96.6% で、的中時の平均払戻は約104円。
– 8頭以上のレースで1番人気が3着内に残る率は 74.71%。南関東4場が最も低く(70.4〜72.3%)、頭数が増えるほど下がる。
– 1番人気が消えると、3着内の馬の複勝の中央値は140円から230円へ、3頭の合計は500円から850円へ上がる。
– 結果で分けると、1番人気が消えたレースの2〜8番人気の複勝回収率は 107.5〜118.3%。残ったレースでは 48.7〜72.3%。
– 1番人気の単勝オッズという事前に見える量で分けても、2〜5番人気の複勝回収率は最高 80.3%、全馬でも最高 83.2% で、100%に届く帯は無い。発走3分前の複勝オッズの帯でも最高 88.33%。
分からないこと
– 1番人気が消える確率を、オッズ以外の情報でどこまで見積もれるかは本稿の範囲外です(前向きの記録で検証中)。
– 1番人気のオッズ帯で分けた表は確定オッズで帯を切っています。締切前に見える1番人気のオッズで同じ表を作ったものは未測定です。
– 控除率は2024〜2025年の値で、2021〜2023年は測っていません。
– 場ごとの複勝回収率は、今回は分けていません。
予想への示唆
- 複勝は控除が単勝より重く、本命側では100円の床に押し付けられます。「当たる確率が高い券種」であることと「回収率が高い券種」であることは別の話だと考えられます。
- 複勝で問うべきは「この馬が3着に来るか」より「1番人気が3着から消えるか」である可能性があります。結果で分けた表では、その一点で2〜8番人気の回収率が100%の上下に入れ替わっていました。
- ただし、1番人気のオッズを見て「消えそうなレース」を選ぶだけでは控除は超えません。オッズに映っていない情報で消える確率を見積もれるかどうかが、複勝の勝負どころになると考えられます。
次回(第12回): 16年で地方の市場はどう変わったか。2010〜2025年の本命の固さ、市場の精度、オッズ帯ごとの回収率を年ごとに並べます。
問うべきは、この馬よりも、あの本命の行方か。
当方の価格モデルによる地方競馬の買い目は、締切3分前にメールで届けるサービスとして準備しています。前向き検証の公開方法と先行案内はこちらのページにまとめています。


