— 寡占の度合い、成績の持続性、乗り替わりの方向(中央競馬との比較・2021〜2025年)
今回の問い
第1回で「地方は本命が固い」ことを見たとき、その理由の候補として「メンバーが固定されている」ことを挙げました。人の側も同じです。地方競馬では、少数の騎手・調教師・馬主に勝ちが集まっているように見えます。今回は三つを確かめます。寡占はどの場でどれほどか。騎手や調教師の「成績の良さ」は翌年も続くのか(=市場が織り込み切れていない何かがあるのか)。そして「上位騎手への乗り替わり」はどれだけ効くのか。
データと方法
- 対象: 中央(平地10場)と地方(帯広を除く13場)・2021年1月〜2025年12月。
- 寡占は、場ごと・年ごとに「その場のその年の勝利数のうち、上位k者が占める割合」を計算し、5年で平均しました。第1回では13場を合算して低く出ていたので、今回は場ごとです。
- 持続性は、2021〜2023年の騎手(調教師・馬主)ごとの複勝回収率と、2024〜2025年のそれとの順位相関です。相関が高いほど「前期に良かった者は後期も良い」ことを意味します。
- 乗り替わりの方向は、騎手をその年その場の勝利数順位でA(上位5人)・B(6〜15位)・C(それ以外)に分け、前走から今走への替わり方で分類しました。
- 回収率はすべて確定オッズによる「地図」で、買い目の主張ではありません。
1. 寡占 — 上位5騎手で勝利の半分、馬主1者で4割の場もある
| 上位5騎手の勝利占有 | 上位5調教師 | 上位1馬主 | |
|---|---|---|---|
| 門別 | 56.5% | 46.0% | 21.8% |
| 盛岡 / 金沢 | 52.4 / 52.0% | 27.8 / 56.0% | 43.3 / 34.1% |
| 名古屋 / 水沢 / 姫路 / 笠松 | 48〜49% | 24〜54% | 27〜46% |
| 佐賀 / 園田 / 高知 | 44〜46% | 21〜52% | 27〜37% |
| 大井 / 川崎 / 船橋 / 浦和 | 36〜43% | 24〜37% | 25〜34% |
| 中央 函館 / 札幌(ローカル) | 41〜42% | 14〜15% | — |
| 中央 東京 / 中山 / 阪神 / 京都 | 33〜39% | 13〜16% | — |
| 中央 新潟 / 福島 / 小倉 | 25〜30% | 11〜13% | — |
地方の他地方(南関東以外)では、上位5人の騎手が勝利の44〜57%を占めます。南関東は36〜43%で、中央のローカル開催(函館・札幌の41〜42%)と同じ水準。中央の主場は25〜39%です。地方の騎手の寡占は中央の1.3〜1.7倍と読めます。
調教師の差はさらに大きく、地方の21〜56%に対して中央は11〜16%。馬主に至っては、水沢・盛岡・名古屋で1者が勝利の4割前後を占めています。地方の一部の場では、大口の馬主が市場を支配しているという構造が数字に出ています。
そして、騎手の寡占が強い場ほど1番人気が固い(14場の順位相関 +0.59)。少数の騎手に勝ちが集まる市場は、誰が勝つかを当てやすい市場でもある、と読めます。
2. 成績は持続するか — 地方は中央の2倍
| 地方(複勝回収の順位相関) | 中央 | |
|---|---|---|
| 騎手 | +0.46(230名) | +0.24(106名) |
| 調教師 | +0.43(361名) | +0.27(172名) |
| 馬主 | +0.16(472者) | +0.09(247者) |
勝率が持続するのは当然です(両市場とも相関 +0.8〜0.9)。問題は複勝回収率が持続するかで、これは「市場が織り込み切れていない差が残っているか」を映します。地方の騎手・調教師は+0.43〜0.46、中央は+0.24〜0.27。地方では「誰が乗るか・誰が仕上げるか」を市場が織り込み切っていない度合いが、中央の2倍近い、と読めます。
ただし、前期に上位20%だった騎手でも後期の複勝回収は77%で、黒字ではありません。一方、前期に下位20%だった地方の騎手は後期も54%のままでした。持続するのは「良さ」より「悪さ」のほうが明確です。馬主の持続性は弱く、馬主名で追う根拠は薄いようです。
3. 乗り替わりは「方向」で読む
| 乗り替わりの方向 | 地方 勝率 | 地方 複勝回収 | 1番人気の勝率 | 中央 勝率 / 複勝回収 |
|---|---|---|---|---|
| 継続 | 10.7% | 71% | 44.0% | 8.9% / 73% |
| 無名 → 上位(C→A) | 16.4% | 79% | 49.5% | 13.1% / 81% |
| 上位 → 上位(A→A) | 13.9% | 76% | 43.3% | 16.2% / 80% |
| 中位 → 上位(B→A) | 12.8% | 77% | 44.0% | 14.0% / 76% |
| 上位 → 中位(A→B) | 7.7% | 70% | 39.3% | 9.9% / 80% |
| 上位 → 無名(A→C) | 5.5% | 62% | 37.5% | 6.1% / 76% |
| 無名 → 無名(C→C) | 4.2% | 63% | 36.6% | 3.2% / 65% |
地方では、無名の騎手から上位騎手への乗り替わりが最も強く(勝率16.4%、1番人気なら49.5%)、上位騎手から無名への降格が最も弱い(5.5%)。複勝回収の差は 79% 対 62% で17ポイント。中央でも向きは同じですが、差は5ポイントにとどまります。地方は「乗り替わりの方向」が中央の3倍効く、と読めます。第5回で見た「減量騎手への乗り替わりが最も弱い」とも整合します。
4. 分かったこと・分からないこと
分かったこと
– 地方の騎手の寡占は中央の1.3〜1.7倍(他地方は上位5人で勝利の44〜57%)。調教師はさらに大きく、馬主1者で勝利の4割を占める場もある。
– 寡占が強い場ほど本命が固い(相関 +0.59)。
– 騎手・調教師の複勝回収は地方で持続する(中央の2倍)。上位でも黒字ではないが、下位20%の騎手は54%のまま。
– 乗り替わりは方向で読める。上位騎手への替わりは最も強く、上位からの降格は最も弱い。差は中央の3倍。
分からないこと
– 騎手の「格」をその年の勝利数で作ったため、厳密には同じ年の情報を使っています。事前に使うなら前年の順位で作る必要があります。
– 寡占と本命の固さの相関は場をまたいだ14点の相関で、因果の向きは分かりません。
予想への示唆
- 地方では騎手の格差が中央より大きく、しかも持続します。騎手を予想の軸に置く根拠は、中央より地方のほうが強いと考えられます。
- 乗り替わりは「替わったか」ではなく「どちらへ替わったか」で読むほうが、数字には合っています。上位騎手からの降格は、地方では明確な減点材料のようです。
- 馬主名で追う根拠は弱いようです。
次回: 「市場の構造と時間」— プールの厚さ、控除、オッズはいつ形になるのか、締切はどう違うのか。
誰が乗るか。いや、誰から誰へ替わるかだな。
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