本記事は、AIによる馬券戦略の開発・検証を記録する実験ログの第1回です。オッズの歪みを利用して回収率110%を目指す試みについて、検証結果をそのまま掲載します。第1回の結論は「オッズ由来の期待値では控除率を上回れない」でした。
実験の目的
JRA(中央競馬)を対象に、馬券の購入ロジックと資金配分をAIが自動で開発・検証し、回収率110%の達成を目指します。使用するツールはPC-KEIBA、データはJRA-VANです。
基本方針は、オッズの歪みを検出し、期待値が100%を超える馬券のみを購入することです。着目したのは、大衆が人気薄を買いすぎ、人気馬が相対的に買われにくいという傾向(favorite-longshot bias)です。この傾向を期待値に変換できれば、控除率を上回れると想定しました。
検証環境
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| データ | JRA-VAN蓄積系(PC-KEIBA経由でPostgreSQLに格納) |
| 対象 | 中央競馬のみ、2023〜2026年 |
| 規模 | 239,009 出走馬 / 19,308 レース |
| 分析 | 自作Python(読み取り専用のデータ層、確率モデル、バックテスト) |
| 検証法 | ウォーク・フォワード検証(過去データで学習し、以降の期間で検証) |
JRA-VANのデータは固定長の文字列形式で格納されているため、解析可能な形式へ変換しました。変換結果は実際のレース1件で着順・オッズ・人気・複勝払戻を照合し、7項目すべてが一致することを確認しています。
検証1:複勝の基礎統計
複勝を機械的に購入した場合の回収率を算出しました。
| 買い方 | 点数 | 的中率 | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 全馬の複勝を等額で購入(2023-2026) | 165,666 | 21.7% | 72.3% |
| 1番人気の複勝のみ購入(2026年6月) | 264 | 65.9% | 84.7% |
複勝の控除率は20%であり、基準となる回収率は80%です。全馬に等額で購入した場合は72.3%となり、基準を下回ります。人気薄への配分が相対的に大きくなるためと考えられます。
一方、1番人気に限定した場合は84.7%となり、基準の80%を上回りました。人気馬が相対的に買われにくい傾向は、複勝においても観測されます。ただし超過幅は控除率を埋めるには至りません。
検証2:Dr Z方式による複勝の期待値フィルタ
単勝オッズから各馬の着順確率を算出し、別に値付けされている複勝プールと比較して割安な馬を抽出する手法です。米国市場では収益性が報告されています。
期待値(EV)の閾値を上げるほど割安な対象に限定されるため、閾値の上昇に伴って回収率が改善することが期待されます。
| EV閾値 | 点数 | 的中率 | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 1.00 | 25,954 | 40.4% | 84.4% |
| 1.05 | 18,263 | 35.8% | 83.3% |
| 1.10 | 13,704 | 32.0% | 82.0% |
| 1.15 | 10,920 | 30.0% | 81.8% |
| 1.20 | 9,108 | 28.4% | 79.7% |
| 1.30 | 6,814 | 27.1% | 76.1% |
閾値を上げても回収率は改善せず、むしろ低下しました。80%台前半で推移し、100%には到達していません。
年別の結果は次のとおりです(EV≥1.10)。
| 年 | 点数 | 的中率 | 回収率 |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,457 | 33.3% | 79.2% |
| 2024 | 4,011 | 32.3% | 84.4% |
| 2025 | 3,860 | 32.1% | 81.8% |
| 2026 | 2,376 | 29.3% | 82.7% |
年による差は小さく、いずれの年も100%を下回っています。
検証3:独自予測モデルと市場オッズの比較
過去成績・馬齢・斤量・馬体重・枠番・距離・馬場状態などを説明変数とする勝率モデルを作成し、市場オッズと比較しました。
| log-loss(低いほど良い) | 1位的中率 | |
|---|---|---|
| 市場(オッズ) | 1.947 | 32.3% |
| 自作モデル | 2.270 | 22.7% |
モデルの1位的中率22.7%は、無作為に選択した場合(約8%)を大きく上回ります。予測能力自体は確認できます。ただし市場の32.3%には及びません。
次に、市場オッズとモデルの予測を統合しました。統合時の重みは学習により決定しています。
| 重み | 値 |
|---|---|
| 市場オッズ | 1.042 |
| 自作モデル | −0.040 |
モデルに割り当てられた重みはほぼゼロでした。市場オッズのみで十分であり、モデルによる追加的な情報は認められないという結果です。統合後の回収率も次のとおりです。
| EV閾値 | 市場のみ | モデルのみ | 統合 |
|---|---|---|---|
| 1.00 | 84.2% | 63.9% | 84.3% |
| 1.05 | 83.5% | 63.5% | 86.0% |
| 1.10 | 82.7% | 63.7% | 83.8% |
| 1.15 | 81.2% | 62.8% | 84.5% |
| 1.20 | 78.0% | 62.5% | 81.0% |
統合後も市場オッズのみの場合とほぼ同水準であり、差はばらつきの範囲にとどまります。100%には到達していません。
検証4:ワイドにおける期待値フィルタ
組み合わせの馬券は値付けの精度が相対的に低く、歪みが残りやすいとされています。そこでワイド(2頭とも3着以内)を対象に同様の検証を行いました。
単勝オッズから2頭がともに3着以内に入る確率を算出し、ワイドのオッズと比較しています。対象は2024〜2026年、784,822点です。
| EV閾値 | 点数 | 的中率 | 回収率 | 平均オッズ |
|---|---|---|---|---|
| 全点購入 | 784,822 | 3.2% | 60.6% | — |
| 1.00 | 59,217 | 10.8% | 78.1% | 54.4 |
| 1.05 | 45,798 | 11.1% | 78.3% | 55.6 |
| 1.10 | 35,084 | 10.8% | 77.5% | 57.0 |
| 1.20 | 19,736 | 10.1% | 77.6% | 61.9 |
| 1.30 | 10,967 | 9.3% | 77.7% | 69.2 |
| 1.50 | 3,624 | 8.0% | 71.3% | 88.7 |
いずれの閾値でも77〜78%で推移しています。ワイドの控除率は22.5%であり、基準線は77.5%です。結果はこの基準線とほぼ一致しました。複勝と同様の結果です。
結果の解釈
これらの結果は、JRAの各プールが相互に整合的に値付けされていることを示しています。
単勝オッズから確率を算出して複勝やワイドと比較しても、控除率に相当する差しか生じません。プール間に独立した歪みが残っていないためと考えられます。米国市場において本手法が有効とされたのは、複勝プールが単勝プールと独立に値付けされていたためと報告されています。
また、本手法を日本のデータに適用した場合に収益が得られなかったという報告は、先行研究にも存在します。今回の検証は、複勝およびワイドの双方でこれを追認する結果となりました。
結論と今後の方針
オッズを加工するだけで回収率110%に到達する経路は、JRAにおいては確認できませんでした。残る方向性は、市場より高い精度で着順を予測することに限られます。ただしJRAは流動性が高く、参加者の水準も高い市場であり、公開データのみでこれを上回ることは容易ではないと考えられます。
第1回の検証で得られた成果は、回収率そのものよりも、仮説の立案・検証・棄却という一連の工程が自動で機能したことにあります。結果は否定的でしたが、否定の根拠は明確になりました。
次回は前提条件の見直しを行います。公開データの限界をどのように扱うか、あるいは限界を前提として問いを設定し直すかを検討します。
本記事はAIが下書きを生成し、人間が公開可否を判断しています。掲載した数値はすべて実データによるバックテストの結果であり、恣意的な抽出は行っていません。本記事は情報提供を目的としたものであり、馬券の購入を勧誘するものではありません。
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